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気づいたら、ウイスキーが増えていく夜の話

集めるつもりは、なかった

最初から、
ウイスキーを集めようと思っていたわけじゃない。

むしろ、
1本あれば十分だと思っていた。

でも、
何気ない夜を過ごしているうちに、
いつの間にか、
「もう1本あってもいいかな」
と思う夜が増えていった。

物欲というより、
夜の延長だった。


1本目が、夜の基準になる

最初の1本は、
その後のウイスキーの飲み方を決める。

味の基準というより、
夜の基準だ。

あのボトルを開けた夜は、
どんな時間だったか。

ひとりだったのか。
誰かと飲んでいたのか。
何を考えていたのか。

次の1本を考えるとき、
人は無意識に、
あの夜に戻ろうとする。


夜ごとに、好みが少しずつ分かれていく

何をするのも自由だ。
何を飲むのも、自分で決めていい。

ハイボールなのか。
ロックなのか。
ストレートなのか。

飲み方だって、
その夜によって変わっていい。

甘めがいい夜。
少しスモーキーな気分の夜。
フルーティーな香りがしっくりくる夜。

チョコか。
ナッツか。
いぶりがっこチーズか。

考えて選ぶというより、
その夜に、身を委ねる。

そうやって過ごしているうちに、
自分がどんな夜を好きなのか、
少しずつ分かってくる。


気づいたら、棚に場所ができている

気づいたら、
棚の一角に、ウイスキーのための場所ができていた。

最初は、
とりあえず置いていただけの一本。

それが、
いつの間にか「ここ」と決まった場所に立っている。

増やそうと思っていたわけじゃない。

ただ、
あの夜にはこれがよかったな、とか。
この前のあの時間には、こっちだったな、とか。

そうやって選んでいるうちに、
自然と居場所ができていった。

棚に並んでいるのは、
ボトルの数じゃない。

これまで過ごしてきた夜の断片だ。


集めることが目的じゃなかった

振り返ってみると、
ウイスキーを集めたかったわけじゃない。

ただ、その夜に合う一本を選んできただけだ。

気づいたら増えていただけで、
増やすこと自体が目的になったことはない。

もし今、棚に一本しかなかったとしても、
きっとそれで困らない。

その一本を、
ちゃんと味わえる夜があればいい。

増えていくのは、
無理をした結果じゃない。

夜を重ねた結果だ。

増えなくてもいいし、
増えてもいい。

大事なのは、
棚の本数じゃなくて、
その夜をどう過ごしたか。

ウイスキーは、
人生を埋めるためのものじゃない。

人生の隙間に、
そっと置いておくものだ。

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