毎日が特別じゃなくてもいい。
何も起きない夜が、ちゃんと記憶に残ればそれでいい。
これは、ウイスキーがあるだけで
何気ない夜を味わえるようになった、ある日の話。
仕事が終わった。
飲食店の仕事は体力仕事だから締め終わりはいつもクタクタになる。
ガス栓の確認とレジ周りの確認、電気を消して戸締まりをしていつもの駐輪場まで向かう。
駐輪場で200円程度支払って家までチャリを漕ぎ出す。
夏の夜は暑い。
自転車に乗りながら風を浴びているのがちょうど心地よくて好きだ。
家に着くまで10分ほど いつもの道をいつも通りにこいで帰る。
何も面白いことはない ただ家に帰ればあいつが待ってる。
今日もその時間が待ち遠しい。
家に着いてチャリに鍵を掛ける 。
疲れて鍵を挿しっぱなしにすることが増えたから意識して鍵を抜いてキーケースにしまう。
そのまま家の鍵を取り出し家に入る 。
暑い 、まずは冷房をつけないと生きてられない。
この暑さだけは全然なれないな 。
だがこの暑さがあいつのうまさをより際立たせる。
台所にあるあいつは今日も変わらず俺を待っている。
グラスに氷を入れてかき混ぜる。
溶けた水をシンクに捨ててあいつを目分量で注ぐ 。
フルーティーで仄かな甘さが鼻の細胞一つ一つを刺激する。
仕事終わりはハイボールに限る。
グラスの中のウイスキーと氷を混ぜ合わせて、炭酸を注ぐ 。
炭酸の注がれたそのグラスの底から登って来る香りに脳が幸せを感じる。
思わずつばを飲む
1日お疲れ様。
今日の自分をいたわり口に運ぶ
飲んだ瞬間、花が咲くように香りが広がり
少しだけスパイシーな刺激を経由して最後にあの香りがゆっくりと残る。
余韻まで楽しい
俺はこいつが大好きだ
何気ない今日の夜が特別な夜に変わるから。
ウイスキーに詳しくなくてもいい。
正しい飲み方を知らなくてもいい。
ただ、今日の夜を
ちゃんと味わえたらそれでいい。
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